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山本英義さんの作る畳表は、ここ4年ほど品評会で連続3位受賞している。
品評会というのは、その年にできた「イグサの原草」と「畳表」の品質を品定めする競技会である。イグサ自体の品質、目のつまり具合、色合いなどが、畳表の品質を左右するということだ。多くの参加者がいる中で3位をとるというのは難しいことだ。しかも連続受賞なんて凄い。
その上、山本さんは特別に品評会用を作ってはいない。
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普段通りの仕事で出来上がった畳表で勝負をするのである。だから、彼の作る畳表に期待はずれがない。どれも受賞作の出来栄えなのだ。
ところが、実は品評会に出すのは乗り気ではないらしい。だから特別なものは作らないのだ。それでも出品をするのは、身近な方の強い薦めがあるからなのだ。
「高額なものではなく、一般市民のための手頃な畳表をボチボチ売ってゆきたい」と山本さんは語る。それに、品評会で良い畳と評価されても値が高くなってしまうだけなのだそうだ。だから山本さんは「3位受賞しても意味がない」と言う。
「どうせだったら農林水産大臣賞をとらないと」と山本さん。一番素晴らしいとされるその賞ならば意味が出る。確かにその受賞作は素晴らしいし、何よりブランド力があるから。しかし、それには時間も気も使わないといけない。生半可では受賞できないのだ。
一般市民のための手頃な農林水産大臣賞受賞の畳をボチボチ作る。山本さんの希望を集めるとこうなる。なかなか難しいが、是非そうなって欲しいと願う。 |
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同級生のほとんどは、高校を卒業時にイグサ作りの道に進んだそうだ。しかし、すでにイグサの生産は平成元年のピークを過ぎ、陰りは見えていた。それから15年、今では八代でイグサを作っている33歳以下は10人にも満たないのではないかという。多くが、トマトなどの作物作りかサラリーマンに転向している。
「イグサから違う作物に変わったっていい」と驚き発言の山本さん。聞くと「イグサよりおもしろいものがあれば」の話だそうで。
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しかしまだそれは見つかってはいない。イグサの生産から畳表の加工までの仕事をこなすのは、大変だがやりがいはあるはずだ。なかなかイグサ作り以上は見つからないだろう。たぶん山本さんはイグサ作りをやめれない。
「やる気はない。一生懸命もやっていない」とまたもや驚き発言。マネする気持ちで仕事をするとのこと。どうやらそれは「一生懸命すれば仕事がきつく感じてしまうから、肩の力を抜いて」ということらしい。話を聞いてると、自分と仕事との距離を、ほどよく保っているのが分かる。
そんな山本さん、今は畳表に個性を出すため、新しいアイディアを探しているそうだ。なんだかんだ言って、イグサ農家で生き残っている事実が山本さんを表している。 |
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(文:京田 真由子) |
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