|
|
|
|
|
|
|
|
「真実は、初めて言うときには、きれいごとにしか聞こえない」。南文雄さんは苦労を思い出しながら語った。
10年ほど前、ほんの数人から「無着色で畳表を作る」ことが始まった。地区の支部長をしていた南文雄さんもその一人だった。賛否両論の中、賛同者半数以下で見切り発車をし、この改革は難航する。
「台頭する中国産畳表との差別化であり、他の農産物同様、安全安心な物を作り、消費者の皆さんに国産畳表のよさを理解していただこう」という想いから無着色は始まったそうだ。
|
|
|
|
|
無着色で作ると決心したときに、不安はなかったのだろうか。売り上げは下がらないか心配しなかったのか。この疑問に南さんは「自信があった」と答える。消費者は、自然で健康的なものを求めていると。それも、スーパーで確信を得たというのだ。昨今、いろいろな食べ物が輸入されているが、輸入野菜は防腐剤などの薬品が使われている。その中の1つの椎茸が、輸入品と国産スーパーで並んで売られていたのだが、皆、安い輸入品ではなく国産をとっていった。安さではなく、安全を選んでいたのである。それが南さんの決心を後押ししたのである。
現在では八代では、ほとんど無着色で畳表が作られている。南さんは誇らしげに語る。「現在流通している畳表の中でも、最も安全性の高い製品だという事ができる。情熱、愛情、誇り、技術、安全性、が集合してやっと熊本畳表が出来上がるんだよ」。 |
|
|
|
|
田んぼは土作りが大事。良いイグサは土作りから。
南さんの場合、30年イグサを作り続けて、少しずついろんな肥料テストしながら現在の配合になったそうだ。「まだ納得してはいないが少しずつ改善している」との言葉が、土作りの難しさを表現している。毎年、暖かかったり寒かったり、雨降りが多かったり降らなかったりといろんな気候になる。2回と同じ気候になることはない。だから自然相手は容易ではない。今年は約18反もの田んぼとの格闘だ。 |
|
|
|
南さんは言う。「心を動かすような畳表を作りたい」と。感動的な畳表には、完璧なイグサが必要である。けれども南さんは、これまでのイグサ作りで満足な出来は4反が2枚だけだと言う。イグサの仕上がりハードルは高い。畳表に対する理想も高い。だからこそ「南さんの作る畳表が欲しい」とのお客様からの声も多い。目に見える形で思いを伝えているからこそ、消費者や仲間からの信頼を得ることが出来ているのだ。
「最近やっと楽しくなってきた。無口だったイグサがやっと語り始めてきた」。
まずは、相手を思い、知り合って歩み寄る。良い関係を築くのには、イグサも人間も方法は同じかな。
「そぎゃんそぎゃん」。南さんは笑いながら頷く。 |
|
(文:京田 真由子) |
|
|