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天津さんが作る畳表は2種類ある。一般的な織り方の畳表は「銀河」。拭いた畳表は白銀色に輝く。
そして、縁なし目積(めせき)表の「太平洋」。目積というのは、目の中に一本の経糸を織り込んだ特別な織り方のことある。織り方が変わるということは織機も代わり、経費もかさむ。しかし「喜ばれるものを作るのは、いつもチャレンジ」と目を輝かせる。
「畳表は、エンドユーザーである消費者にわたる前に畳屋を介する。だったら畳屋に気持ちよく仕事してもらわないと、消費者に畳表の良さは伝わらない」
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その思いは論より証拠。畳屋さんが仕事しやすいようにと「太平洋」の横幅は普通より2cm長く織られている。サービスというものをよく分かっているのだ。たかが2cm、されど2cm。その2cmは確実に畳屋さんを助けている。
畳表の幅を太平洋のように広く。それで「太平洋」。天津さんの心も負けずに広い。 |
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「5つの田たんぼを持っているが、毎年1つくらいはあまりできん子もいる」と、まるで我が子を語るかのように愛しそうに笑う。そして、中国産の畳表に押される現状を「イグサもさみしい思いをしている」と語る。天津さんはイグサと心を通わせる人だ。
そんな天津さん、イグサ作りは「土作りが基本」という。田んぼの調査は毎年する。何の成分が足りないかを調べ、その足りない分だけを肥料で補う。
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農産物を考える時、特別な農法以外では肥料をまくものだというイメージがある。プランターや植木鉢にしてもそうだ。しかし天津さんはこう説明する。「なんでもかんでも肥料をやればいいってもんじゃない。必要なものを必要な分だけ与える。それが大事」。
多くを与えれば良いわけではないのだ。不必要なことまで行う必要はないのである。シンプルだが、簡単なことではない。そのためには、相手の心に耳を傾けなくてはならないのだから。心の余裕と愛情深さが必要不可欠なのだ。
天津さんのことを「鵜呑みにするのではなく、本当の意味で人の言うことを聞く人」と称する人がいた。多くに耳を傾け、自分に合わせて参考にするということだろう。自分自身においても、まさに「必要なものを、必要な分だけ」取り入れている聞き上手なのである。
「イグサ作りを辞めたいと思ったことはない」と天津さん。「イグサで始まり、イグサで終わる」と自身の人生を表現する。まだまだ、天津さんのチャレンジは終わらない。 |
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(文:京田 真由子) |
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